平常心でスタートラインに立つ

古本屋で、高橋尚子著「風になった日」幻冬社を見つけ買ってきました。
2000年のシドニーオリンピックで、金メダル獲得記念に出版された本で、陸上を始めたきっかけから金メダルを獲得して、次の目標として世界記録更新を目指すことを決意するまでが書かれていました。


この本を読んで、高橋尚子さんのメンタル面ですばらしいと思ったのは次の点です。
(以下は、「風になった日」からの引用です)。


1999年のセビリアでの世界選手権では、初の世界大会ということで体調は良かったのだが、すごく緊張していた。そんな時に、左腰下の「腸頸靱帯」に炎症を起こし、走る直前に出場を断念したのだ。

どれだけいい練習をして、どれだけ緊張しても、結局は走れなかった。

それがすごく悔しかった。
自分の手が痙攣して震えるほどショックだった。
震えがいつまでの止まらなくて、涙が次から次へとこぼれた。

そんな悔しい思い出があったから、
「いや、走れるだけでいいじゃないか。世界の舞台で、自分が今までやってきたことを全部ぶつけて競える。どんなに成績が悪くても、それだけですごく幸せなことなんだ」
そう思えてきた。

昨年のセビリアで、私はスタート地点にも立てなかったのだから‥

走れるだけで、幸せ。だから思いっきり楽しく走りたいし、たとえ走り終わって結果が悪くても、一緒に競い合った人たちと抱き合いながら、
「私は一生懸命やったよ。ダメだったけど悔いもないし、力いっぱい走ったよ」
そう言えるレースがしたい。

それだけを思ってスタートラインに立ったのだ。

風になった日